Jablogy

Sound, Language, and Human

Book

マルセル・モース 『贈与論』

【書誌情報】 マルセル・モース 2009 『贈与論』 吉田禎吾・江川純一訳、ちくま学芸文庫 (Mauss, Marcel. 1923 “Essai sur le Don : Forme et Raison de l'Échange dans les Sociétés Archaïques.” L'Annee Sociologique, seconde série.) 贈与論 (ちくま…

『フミカ』1.5、超文学フリマ@ニコニコ超会議で頒布

すでにツイッターでもお知らせしましたが、『フミカ』の新刊がニコニコ超会議2内の文系同人誌即売会、超文学フリマで出ます。 イベント名:超文学フリマ 日時:2013年4月28日(日)10時〜17:00 会場: 幕張メッセ(「ニコニコ超会議2」内) アクセス:JR京…

『Vocalo Critique』 vol. 05感想

最終刊がすでに発表されているVocalo Critique。vol.05の感想を下書きまでしていたのですが、気になるところをメモしまくっていたらずいぶん長くなってしまい、結果、完成させるのがすっかり遅くなってしまいました。若干今更な感じもありますが、ちょっとで…

井手口彰典『同人音楽とその周辺』

同人音楽に関するほぼはじめての学術書であり、ボカロも扱われているということで注目していた本書をようやく一通り読み終えました。同人音楽とその周辺: 新世紀の振源をめぐる技術・制度・概念作者: 井手口彰典出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2012/02/22メ…

英語史入門の本を読んでみた

英語圏の音楽言説をもっと知りたいので、最近英語の学習に力を入れています。英語学習、とくに語彙を増やす上で、語源を調べ、その語の歴史的な変遷を知ると記憶の助けになることが私の体験上わかっているのですが、そうした学習をしようと語源辞典などを調…

マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

書誌情報: Weber, Max. 1920 “Die protestantische Ethik und der 》Geist《 des Kapitalismus,” Gesammelte Aufsätze zur Religionssoziologie, Bd. 1, SS. 17-206. (ウェーバー、マックス 1989 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 大塚久雄…

『同性愛と異性愛』、『哭きうたの民族誌』、『メイキング人類学』

長年の積ん読を少し崩したので簡単なメモを。 風間孝・河口和也 2010 『同性愛と異性愛』 岩波新書 同性愛と異性愛 (岩波新書)作者: 風間孝,河口和也出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/03/20メディア: 新書購入: 5人 クリック: 88回この商品を含むブロ…

村井康司 『ジャズの明日へ ―― コンテンポラリー・ジャズの歴史』

『スイングジャーナル』や『ジャズ批評』で活躍されている(た)ジャズ批評家村井康司による60年代〜現代までのフュージョンやコンテンポラリー・ジャズをジャズ史として位置づけようという挑戦的な一冊。ジャズの明日へ―コンテンポラリー・ジャズの歴史作者…

佐々木俊尚『キュレーションの時代 ―― 「つながり」の情報革命が始まる』

twitter上などでご活躍のメディア・ジャーナリスト佐々木俊尚氏が「キュレーション」という概念を紹介している本。ボカロや音楽を論じる言葉を考えていく上で有用と思いますので取り上げてみます。キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ち…

高橋健太郎 『ポップミュージックのゆくえ ―― 音楽の未来に蘇るもの』

本書は、twitterやtogetterでもおなじみの音楽評論家、高橋健太郎が1991年時点での「これからのポップミュージックに対して持っているビジョンを表現することに重きを置いて」(あとがき、p. 216)書き下ろしたした評論集を2010年にアルテスパブリッシングが…

マルコ・イアコボーニ 『ミラーニューロンの発見』

他者の行為をみているとき、その行為をトレースし鏡写にするかのように発火する脳内の神経部位:ミラーニューロン。その発見は生命科学におけるDNAの発見にも比肩するといいます。ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新…

細川周平『レコードの美学』

はじめに 日本におけるポピュラー音楽研究の先駆者の一人、細川周平の大著。博士論文を改稿したものとあって、大きなボリュームにもかかわらずロジカルな構成になっていて読みやすいです。レコードの美学作者: 細川周平出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 199…

『筑波批評』2011年秋号

今号も寄稿者のやおきさんにご恵投いただきました。ありがとうございます。今回は「街」がテーマということで、表紙もシムシティみたいな感じで、論考は前半3つが「街」に関係したものになっています。あとは後半で村上裕一の『ゴーストの条件』への言及が…

スタジオ・ハードデラックス編 2011 『ボーカロイド現象 ―― 新世紀コンテンツ産業の未来モデル』 PHP研究所

SFマガジン・ミク特集に続いて、『Vocalo Critique Pilot』における文献ガイドの補足・その二、を試みたいと思います。ボーカロイド現象作者: スタジオ・ハードデラックス出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2011/03/17メディア: 単行本(ソフトカバー)購入…

島袋八起編 2011 『Vocalo Critique』 Pilot, Nov. 2011、白色手帖

本誌は、2011年6月の文学フリマで頒布された『Vocaloid Critique』*1 の再版ver. です。 文学フリマにくる、あまりネット文化・ボカロ文化に馴染みのない人を読者に想定して書かれているため、vol. 01 とはだいぶ毛色の違うものになっていますが、議論の濃さ…

佐々木敦 2008 『「批評」とは何か? ―― 批評家養成ギブス』 メディア総合研究所

はじめに 音楽を中心に多ジャンルで活躍する批評家、佐々木敦が自身で主催するカルチャースクール〈BRAINZ〉において開講した「批評家養成ギブス」という連続講座をまとめたもの。(ブレインズ叢書1) 「批評」とは何か? 批評家養成ギブス作者: 佐々木敦出版社…

チーム☆独身者編 『らすてぃら』

Vocalo Critique Pilot 寄稿者のまつともさん(@matchamttm)が参加しているサークルが2011年6月の文学フリマで頒布した同人誌。サークル名の「独身者」とはミシェル・カルージュが『独身者の機械』*1において提唱した概念によるようです。近代社会における…

S-Fマガジン [2011年8月号 特集・初音ミク]

先日文学フリマにて頒布されましたVocalo Critique Pilotの文献ガイドでも紹介した雑誌です。Pilotでは手短な紹介しかできなかったので補足を試みたいと思います。S-Fマガジン 2011年 08月号 [雑誌]出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/06/25メディア: 雑…

菊地成孔・大谷能生 2008 『M/D ―― マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究』 エスクァイア マガジン ジャパン

ジャズミュージシャン・評論家の菊地成孔・大谷能生のコンビによる「ジャズの帝王」マイルスの研究本。『東京大学のアルバート・アイラー』に続く東京大学教養学部での講義(2005年)をまとめたものに、その後行なわれたインタビューや雑誌へ寄稿されたエッ…

濱野智史 2008 『アーキテクチャの生態系 ―― 情報環境はいかに設計されてきたか』 NTT出版

情報技術に注目した批評で活躍する濱野智史の、いまのところの主著といっていいでしょう。ネットやウェブサービスを単なるメディアとみるのではなく、「情報技術(IT)によって設計・構築された人々の行動を制御する『アーキテクチャ』」(p.14)としてとら…

斎藤環 2006 『生き延びるためのラカン』 バジリコ

斎藤先生ご専門のラカンを解説。「日本一わかりやすいラカン入門」を標榜しています。語りかけるような口調というか文体で、ざっくりとしたレクチャーを受けているような感覚になります。細かい説明は大分はしょられているので、正確さ・厳密さには懸けると…

村上裕一 2011 『ゴーストの条件 ―― クラウドを巡礼する想像力』 講談社BOX

ゼロアカ道場優秀者の単著デビュー作。道場主の東浩紀がとりあげてきた美少女ゲームに加えて、ニコニコ動画でのUGC・二次創作を大きく取り上げているのが特徴ですね。 ゴーストの定義 いずみのさんもいうように*1本書を通して「ゴースト」という用語*2は…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (3)

(2)へ Ⅲ 声と人称 第Ⅲ部では語ることと、そのかたりが帰属する人称・人格の問題が論じられる。前述したとおり私の多重化や非人称化される歌、非・近代社会における個性といったことが取り上げられ、西洋近代的な「我」や「ペルソナ」の概念をアフリカの文…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (2)

(1)へ Ⅱ 声によるコミュニケーション 第二部では他者に対し呼びかけることで社会的な関係への参入を引き起こさせるという名前のもつ働きに注目した議論がなされている。筆者としては、このあたりは声や歌の議論よりもむしろ、キャラクターと固有名などの議…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (1)

概要 『音・ことば・人間』でも紹介した、西アフリカ・ブルキナ・ファソのモシ族を調査してきた川田順造による、声とそれを使ったコミュニケーションの文化的な側面を考察するエッセイ集で、『現代詩手帖』(思潮社)で1985年3月号から1986年11月号まで連載…

斎藤環 2011 『キャラクター精神分析 ―― マンガ・文学・日本人』 筑摩書房

はじめに ラカン派精神科医の批評家・斎藤環によるキャラクター論。 筑摩書房のHPから目次を引用させていただくと次の通り。 第1章 「キャラ」化する若者たち 第2章 「キャラ」の精神医学 第3章 「キャラ」の記号論 第4章 漫画におけるキャラクター論 第…

小田亮 2000 『レヴィ=ストロース入門』 ちくま新書

続・積ん読くずし。もっと先に読むべき本があるけど、なかなか大変。早いものでレヴィ=ストロースがなくなってからもう2年が経とうとしており、構造主義が隆盛を誇ったのも昔になりつつありますが、著者のレヴィ=ストロースへの共感が深く、いまでも彼の思…

感想:『ユダヤ・エリート』、『中国の旅』、『子どもはことばをからだで覚える』

音楽とは直接かかわらない本の感想をまとめて記しておきます。 鈴木輝二 2003 『ユダヤ・エリート ―― アメリカへ渡った東方ユダヤ人』 中公新書 アメリカのポップスにも大きく影響を与えたユダヤ人移民についてすこし知りたいとおもい積読になっていたのを崩…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (3)

(2)へ、はじめから読む方はこちら(1)へ ■考察 下部構造が上部構造の影響、因果関係の不分明 死に舞さん(@shinimai)も いろんなとこで言ってるけど、ベンヤミンのアウラは認識論的な話と複製に関わる存在論的はなしごっちゃにしているから使えない。 http…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (2)

(1)へ ■写真と映画 編集(モンタージュ) 技術的複製可能性の時代における芸術の問題としてベンヤミンが意識しているのは、印刷やレコードのプレスによる大量生産によるアウラの減退ということだけではない。むしろ写真や映画のカメラが作品を撮影する事に…