Jablogy

Sound, Language, and Human

music

細川周平『レコードの美学』

はじめに 日本におけるポピュラー音楽研究の先駆者の一人、細川周平の大著。博士論文を改稿したものとあって、大きなボリュームにもかかわらずロジカルな構成になっていて読みやすいです。レコードの美学作者: 細川周平出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 199…

菊地成孔・大谷能生 2008 『M/D ―― マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究』 エスクァイア マガジン ジャパン

ジャズミュージシャン・評論家の菊地成孔・大谷能生のコンビによる「ジャズの帝王」マイルスの研究本。『東京大学のアルバート・アイラー』に続く東京大学教養学部での講義(2005年)をまとめたものに、その後行なわれたインタビューや雑誌へ寄稿されたエッ…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (3)

(2)へ Ⅲ 声と人称 第Ⅲ部では語ることと、そのかたりが帰属する人称・人格の問題が論じられる。前述したとおり私の多重化や非人称化される歌、非・近代社会における個性といったことが取り上げられ、西洋近代的な「我」や「ペルソナ」の概念をアフリカの文…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (2)

(1)へ Ⅱ 声によるコミュニケーション 第二部では他者に対し呼びかけることで社会的な関係への参入を引き起こさせるという名前のもつ働きに注目した議論がなされている。筆者としては、このあたりは声や歌の議論よりもむしろ、キャラクターと固有名などの議…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (1)

概要 『音・ことば・人間』でも紹介した、西アフリカ・ブルキナ・ファソのモシ族を調査してきた川田順造による、声とそれを使ったコミュニケーションの文化的な側面を考察するエッセイ集で、『現代詩手帖』(思潮社)で1985年3月号から1986年11月号まで連載…

ボカロクリティーク Vol. 01 後半を紹介!

こちらでやおきさんが今度のボーマスで頒布される『ボカロクリティーク』の紹介をしてますが、私も校正をお手伝いしたご縁で原稿を見せていただいていますので、簡単に感想でも述べて宣伝に協力したいと思います。やおきさんも更新で残りを書かれるみたいで…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (3)

(2)へ、はじめから読む方はこちら(1)へ ■考察 下部構造が上部構造の影響、因果関係の不分明 死に舞さん(@shinimai)も いろんなとこで言ってるけど、ベンヤミンのアウラは認識論的な話と複製に関わる存在論的はなしごっちゃにしているから使えない。 http…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (2)

(1)へ ■写真と映画 編集(モンタージュ) 技術的複製可能性の時代における芸術の問題としてベンヤミンが意識しているのは、印刷やレコードのプレスによる大量生産によるアウラの減退ということだけではない。むしろ写真や映画のカメラが作品を撮影する事に…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (1)

■はじめに テキストのベクトル ―― ファシズムに抗して 序言と後書きにおいて、ファシズムの芸術利用に対してオルタナティブとなる共産主義的な芸術のあり方についてベンヤミンは述べている。ナチスやファシズムによる芸術を利用するポリティクス、すなわち政…

小泉文夫は民族音楽学学者なのか?

◆イメージのズレ 「民族音楽」や「日本の伝統音楽」に関心のある人ならだれもが一度は参照する小泉文夫。一般にはテレビなどで「民族音楽」を紹介した仕事で有名ですね。「民族音楽」を研究している人なのだから「民族音楽学者」なのだろうと普通は理解する…

川口千里インタビュー in オールナイトニッポン

7月8日のオールナイトニッポンで女子中学生ドラマー・川口千里さんのインタビューが放送されていました(http://senri350.blog.so-net.ne.jp/2011-07-07、ニコニコ生放送のタイムシフト視聴で一回限り視聴できるようです http://live.nicovideo.jp/watch/l…

大和田俊之 2011 『アメリカ音楽史──ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』 講談社選書メチエ (3)

前の記事(2)へ、(1)から読む方はこちら ■本書をうけての考察 *マーチング 白人と黒人の関係で言えば、私の関心からはまずマーチングや drum corps のことが思い浮かびます。ジャズドラム史またロック史においても、著名なドラマーの多くは黒人白人を問…

大和田俊之 2011 『アメリカ音楽史──ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』 講談社選書メチエ (2)

前の記事(1)へ ■各章のダイジェスト 各章のテーマや興味深いトピックを一言ずつふれるとつぎのような感じです。 第1章 黒と白の弁証法 ―― 擬装するミンストレル・ショウ ミンストレル・ショーにおいてユダヤ系やアイルランド系が「黒人」を することによっ…

大和田俊之 2011 『アメリカ音楽史──ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』 講談社選書メチエ (1)

大和田俊之『アメリカ音楽史──ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』の紹介をしたいと思います。長くなったので3回にわけてお届けします。 ■本書の位置づけ *キーワード について アニメの人気作になぞらえて「今季の覇権」本とすら評され…

木本玲一 2009 『グローバリゼーションと音楽文化』 勁草書房

民族音楽学・音楽人類学的アプローチによって日本にヒップホップ・ラップが「根づいて」いったことを描いた本。すでに死に舞さん*1やinainabaさん*2も紹介を書かれています。内容のあらましをamazonから引用します。 内容紹介 日本におけるラップ・ミュージ…

Vocaloid批評の同人誌に寄稿します

明日開催される文学フリマで頒布される予定の原稿を書き終えました。 声とキャラクターに関して理論的な面と合成音声界隈を概観する、 というような内容になりました。どこでどのように頒布になるかなどわかってないので また追記したいと思います。追記1 …

8ビート・16ビートというリズム概念について

表題のトピックについてtwitterにポストしたことのまとめ。 細部が荒く先行研究もみていないので後々議論を深めていきたいです。ja_bra_af_cubeatとか拍というのは、基礎的なパルスがいくつかあつまって小節というリズムのまとまりを造る際の、その基礎的な…

Bibliography

関心のある本をまとめて欲しいとリクエストを頂いたので、Bibliographyを公開します。 関連性の薄いもの、入手・未入手、既読・未読が混じってますが、思索のためのメモでもありますのでご容赦ください。(2011年9月17日 ver.2.0) 民族音楽学・音楽人類学 M…

UTAUによるキャラクターの「声」の可能性

twtterの方で面白い話になったのでまとめてみました。Hidazou_san2ch某スレ経由、「UTAU音源テスト」。「人間の声と猫の声を合成した」ライブラリ、との事。 ※未配布ですので御注意。 【キメラ音源】ウタウタウ【UTAU】 (3:45) #nicovideo #sm14603070 http:…

輪島裕介 2010 『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』 光文社新書

表題の本のノート。操作ミスでデータが飛んでしまったので再掲です。 やはり手元のエディタに保存しながら編集すべきですね。【第一部】 近代日本大衆音楽史を三つに区分 第一期 レコード会社専属制度の時代(昭和初期[20年代後半]〜30年代[50年代後半]) 第…

川田順造・武満徹 1980 『音・ことば・人間』 岩波書店(同時代ライブラリー [1992])

はじめに このブログのタイトルに書名を流用させていただいた、お気に入りの本をここに紹介したいと思います。本書は西アフリカのブルキナファソをフィールドとする文化人類学者・川田順造と尺八や琵琶を現代音楽にもちこんだ作品で知られる作曲家・武満徹の…

『ユリイカ 2008年12月臨時増刊号 : 総特集♪初音ミク――ネットに舞い降りた天使』青土社

以前Twitlongerに公開したノート。抜き書きとコメントをつけています。 本書全体への感想や考察などはid:sakstyleさんによるまとめ(http://togetter.com/li/139590)をご参照ください。■佐々木渉「生みの親が語る初音ミクとアングラカルチャー」pp.9-17 ・V…