英語史入門の本を読んでみた
英語圏の音楽言説をもっと知りたいので、最近英語の学習に力を入れています。
英語学習、とくに語彙を増やす上で、語源を調べ、その語の歴史的な変遷を知ると記憶の助けになることが私の体験上わかっているのですが、そうした学習をしようと語源辞典などを調べてみるとき、どうにも説明のための言葉がよくわからないことがしばしばあります(Old Norseってなんだろう、とか)。
そんなふうに思っていたところフォロワーさんなどを通じて英語史という分野があることを知ったので、ここはひとつ基礎的な知識を仕入れようと二冊ほど入門書にあたってみました。
- 作者: 橋本功
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2005/09/10
- メディア: 単行本
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- 作者: 島村宣男
- 出版社/メーカー: 関東学院大学出版会
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
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橋本の方はいかにも大学で使う教科書といった雰囲気で、英語を取り巻く政治経済史的な環境と、英語内部の歴史的な発展の両方を年代ごとにおさえてあります。
島村のものは逆にシェイクスピアなどの近代からはじまって年代を遡って論じていくというユニークなスタイルをとっています。内容も概説よりは興味深いトピックを論じていく形。トールキンなんかもさらっとでてきたり。
アングロ・サクソン人によるケルト人の押しのけ、ヴァイキングとアルフレッド大王の抗争、ノルマン・コンクエスト、百年戦争、バラ戦争とチューダー朝、これら中世から近世のブリテン島史が大きく英語のあり方を左右しているというのは面白いですね。
かつ中世における人や社会のあり方が近代人たる私にはいまひとつ肌で感じることが出来ないというのもより自覚できたように思います。
現代英語の文法事項でどういう理屈でそのような用法になっているのかわからない項目というのがよくありますが、そうした事象も英語史を追ってみると意外に合理的な発展をしていることがわかるのだということも学べました。
例えば、go home, all day, these days などの名詞なのに副詞として使われる後は古英語の格変化に由来してそれが可能になっているとか(橋本 2005: 106)、接続詞のthatはちゃんと指示代名詞のthatから発展したものだとか(橋本 2005: 122)、完了形はhaveの have+目的語+過去分詞の用法の「達成」の意味合い(I had the purse stolen. / 財布を [うまく] 盗んだ状態にした)から発展したのではないかと思われること(橋本 2005: 158)であるとか。
人によってはそんなことは気にしないでまるごと覚えればいいんだよ、というタイプもいるかもしれませんが、私のように理屈で納得がいくと覚えやすくなるタイプは気になったら英語史による説明を調べて見るようにすると、英文法も立体的に理解し記憶できてよいかもしれません。