Alexader Stewart “‘Funky Drummer’”
【書誌情報】
Stewart, Alexader. (2000). “‘Funky Drummer’: New Orleans, James Brown, and the Rhythmic Transformation of American Popular Music.” Popular Music vol.19, No.3, pp. 293-318.
大和田俊之『アメリカ音楽史』で言及されていたのをきっかけに知ったこの論文。一度読み終わったとき、twitterで次のように感想を述べました。
@ja_bra_af_cu: Alexander Stewart「Funky Drumer」って論文に目を通したけどすごく面白かった。ずっと聴いて考えて来たことに承認もらえた感じ。
@ja_bra_af_cu: ブキウギのポリリズム性とかファンクへのラテンの影響とかはそうだろうなと思ってたんだよねー。
@ja_bra_af_cu: JBのスタイル確立に関わったドラマーがニューオーリンズ出身でかなりその土地の伝統を伝えたというのは知らなかったので唸らされた
@ja_bra_af_cu: ポピュラー音楽のリズム史を考えたい人は必読と言えるのではないかな。
@ja_bra_af_cu: ファンクの美学の話も面白かったな。oneにこだわるとか、宇宙行っちゃうとかw、マルディグラの仮装とPファンクのイカレた衣装が同じ意識──シグニファイン──に基づいてるって解釈とか
こうしたよい文献は広く読まれるべきと思うので、公開されている冒頭部 *1 を翻訳してみました。
原文は1パラグラフで書かれていますが、ディスプレイ上での読みやすさを考慮して適宜改行し、行間にスペースを空けています。
ある特異なスタイルのリズム・アンド・ブルース(R&B)が第二次大戦後ニューオーリンズからあらわれ、ファンクが発展する上で重要な役割を果たした。
それと関連して、アメリカのポピュラー音楽の基底的なリズムは三連符ないしシャッフル・フィール(12/8拍子)からストレートな8分音符(8/8拍子)へと移行した。
この変化は基本的なものだが、一般的には知られていない。多くのジャズ史家はジャズミュージシャンがスウィングを学んでいったプロセス(例えばフレッチャー・ヘンダーソン楽団は1924年にニューヨークに到着したルイ・アームストロングを通じて学んだ)には関心を示してきたが、反対にどのように「ストレートなリズムにもどったか」についてはほとんど分析されていないのである。
最も初期のロックンロール――この呼び名を与えられた最初の例であるR&Bの楽曲たちや、そのすぐあとに続いてあらわれたロカビリーのようなスタイル――はその大部分がシャッフルリズムのままであった。1960年代には 新しいスタイルのロックにおいて拍を均等に分割することが一般的になり、反対に12/8拍子が現れるのは比較的まれになっていた。
三連符から均等な八分音符への移行は拍子の単純化であるとみなされる場合もあるだろう。しかし同様に、この三連符から均等な八分音符への変化は、[ロックンロール的な8/8拍子から] ニューオーリンズのR&Bやファンクにおいて発達した16分音符を基調としたリズム [sixteenth-note rhythms] へと、拍がさらに細分化されるのを後押ししたのである。
http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=61760
本論文中ではこれに続いて全体の概観が次の通り述べられています。
まず、アメリカ音楽の歴史において「ストレート・リズム」がどのように現れたかを簡単に論じた後、三つの主要な論点を考察する。
すなわち(1)混ざった拍子 [mixed meter] *2 あるいは「オープンシャッフル」、(2)「セカンドライン」あるいはストリートを行進するマーチングドラムのパターン、(3)カリブからの影響、である。
次の章ではジェイムス・ブラウンと「ザ・ワン」の美学、およびそれらとニューオーリンズのリズムの関係を論じる。
最後に70年代のファンクの様々なスタイルとそれらがそれぞれ異なったジャンルとして受容されたことを論じる。
[Stewart, 2000: 293-4]
アフリカンポリリズムとの連続性やラテン音楽との関わりの上で興味深いトピックが頻出なので、もう少し読みを深めて紹介あるいは具体的な議論をして行けたらと思います。