Jablogy

Sound, Language, and Human

英語史のアウトライン

この本を読んでみてとてもわかりやすかったので、英語が各時代ごとの背景によってどういう特徴をもつことになったかのあらましをざっくりレジュメにしてみた。レジュメなのでもちろん落としていることはたくさんあるけど、一応、記憶しやすいツリーの形に縮約したつもり。

/* 政治史だけ勉強してるときは各事件の意義がわかりづらかったものだけど、英語を軸に見ることでそれぞれの出来事の性格や重要性がイメージしやすくなったように感じる(音楽史でも同じことなんだけど) */

古英語 (450-1000)

  • 七王国の繁栄(5c-9c)
  • 『ベオウルフ』(8世紀)

  • デーン人侵入・ヴァイキング時代
    • Old Norse(古ノルド語)との接触
  • アルフレッド大王(871年-899年)

  • 活用語尾の消失へ
    • 互換が同じで活用語尾だけ違う英語と古ノルド語の共存する地域
    • → 語尾を落としてコミュニケーション

中英語 (1000-1400)

  • ノルマン・コンクェスト (1066)
    • ノルマン・フレンチ流入
    • 英語の地位低下
      • → 英語は口語中心に、文語の軛なく自由に変化するようになる

  • プランタジネット朝 (1154)
    • フランスに広い領地を持つヘンリー二世即位
    • →セントラルフレンチの流入へ

  • 借用語
    • フランス語
      • 政治・経済・法律・軍事・服飾・料理など多様な分野で
      • 食肉・製品、などハイソな分野に
    • ラテン語
      • 宗教、法律、医学などの専門分野
    • アラビア語
      • 十字軍、仏・羅・西語を通じて
      • 錬金術・化学、数学など

  • 英語の復権
    • 失地王ジョン、フランス領地を喪失 (1204)
      • フランスとのつながりが薄れる
    • フランスとの百年戦争(1337-1453)
      • フランス語の敵性語化、英語への国語意識
    • チョーサー『カンタベリー物語』(1387-1400)

初期近代英語 (1450-1700)

  • 社会経済的な背景

  • 内面史
    • 大母音推移
      • 母音の舌の高さが一つずつ高い方へズレる、一番高い iː と oː は二重母音に
    • ゼロ派生
      • 接辞や複合語での生産力低下。代わりに、活用語尾がないことによる品詞転換
    • 助動詞、前置詞の発達

後期近代英語 (1700-[1950] *1 )

  • 産業革命によって大英帝国が隆盛
    • 鉄道など交通機関の発達
      • ロンドン中心の標準英語が各地へ

  • 科学的合理主義、ナショナリズムの高揚 → 標準化、固定化の必要性 → 規範文法書や辞典の編纂が盛んに(18世紀)
    • スウィフトら、アカデミーの設立を促すも不成立(1712)
    • Lowth, Robert. (1762). A Short Introduction to English Grammar.
    • サミュエル・ジョンソン、初の英語辞書
    • 国家のhonourをかけたOEDの編纂
    • Fowler's MEU(イギリスの権威ある語法指南書として長く親しまれる)
    • ウェブスター辞書(米式綴りの基礎)

現代英語 (1950-)

  • コンピュータ、インターネット用語

  • リングワ・フランカとしての英語

  • 米語の英語への影響

参考文献

*1:英語学では20世紀から現代英語 (Present day English) という区切りにするようだが、標準化の話をまとめるには第二次大戦あたりで切ったほうがわかりやすいと感じたので、ここでは50年で切ってみた