読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Jablogy

Sound, Language, and Human

ヤマノススメOP「夏色プレゼント」アナライズ

かわいいキャラデザ、実力ある声優さんたちの好演、美しい背景美術で登山の楽しみを描く「ヤマノススメ」、とても楽しく拝見しています。

OP曲もすごくいいのでご紹介&アナライズしてみます。 クレジットはこちら:

ヤマノススメセカンドシーズンOP主題歌 「夏色プレゼント」
 
歌:あおい(CV:井口裕香)ひなた(CV:阿澄佳奈)かえで(CV:日笠陽子)ここな(CV:小倉唯
 
作詞:稲葉エミ 作曲・編曲:Tom-H@ck

歌詞がいいなと思ってたら稲葉エミさんって放課後ティータイムの作詞してた方だそうで*1。どうりでけいおん!好きな私が気に入るわけです。

その歌詞は次のようになっています*2

[サビ / イントロ]
♪夏色プレゼント
一緒に駆け抜けた時
最高のプレゼント
この胸の一番の
宝物だよ、わぉ
 
[Aメロ]
ねぇ
お互いの指と指、四角を作ったら
目の前の景色全部
切り取って、持ってけるかな?
 
[Bメロ]
待ってたって二度と、来ない今日の日
空の青、感動の輪を
顔見合わせて笑顔
 
[サビ]
そう、お揃いのプレゼント
泣いて笑った、precious days
10年後、100年後
色あせない思い出
半分持ってて、わぉ
 
夏色プレゼント♪
 
(参考:ヤマノススメ。1話感想、主題歌耳コピ歌詞付(OP2話以降verに修正、ED修正)。|Do you feel loved?。アナタに届けたい想い

いまこの時間を一緒に過ごすことが最高のプレゼントで、その大切な思い出をわかちあうっていう、労りと思いやりと一回性を捉える奇跡がつめこまれた日常系の精髄って感じのいい歌だと思います。こういうの弱いんです、私w

マーチ的な曲調もぐんぐんと力強く歩んでいく感じが登山というテーマとあっていていいですね。

押韻

言葉の意味的なところの他に気がついたのは、すごく効果的に韻が踏まれているという点。特に全体的に脚韻が目立ちます。

やおきさんのメソッド*3に基いてひらがな・カタカナに還元しながらみてみましょう。

ますはじめの[サビ / イントロ]。

なついろプレゼント
いっしょにかけぬけたとき
さいこうのプレゼント
このむねのいちばんの
たからものだよ、わぉ

「なついプレゼン」「さいこうプレゼン」で「お」が脚韻になっています。

かつ、この「お」の音がすべて三拍目のオンビートに載っており、プレゼンの「ト」で「ソシ」と主音に解決するのですごく安定感と力強さを感じさせてて、とても気持ちがいい(実際に自分で口を動かしてみるとよくわかると思われ)。

逆に、「このむねのいちばんの」「たからものだよ、わぉ」でも「お」の音は多用されていますがオフ・ビートに載っているのであまりインパクトは強くない感じ(二回目サビの「いろあせないおもいで」も同様でオフ・ビート、かつ配字シンコペーション*4になってる)。この対比がいいですよね。

そして二重母音化した「わぉ(ao)」で次のセクションにつながるかけ声がかかっていますが、これと似たかたちがサビ前のBメロでも使われているのがワザマエに思えます。

[Bメロ]
まってたってにどと、こないきょうのひ
そらのあお、かんどうのわを
かおみあわせてえがお
そう、[サビに続く]

「そらのあお」は「わぉ」と同じく、配字シンコペーションによって二重母音化した「あお(ao)」が一拍の中で軽やかに発音されています。

「かんどうのわお」では「わお(wao)」の「お」がベース・ドラムとユニゾンシンコペーションしている。

次の「かお」まで「あお(ao)」の音が裏拍と配字シンコペーションで軽く使われていて、最後の「えがお」でサビと同型の落ちついた譜割りになる。

Aメロではあまり「お」の脚韻は使わず(使われているけどそれも4拍目のアップビートに載ってる)、Bメロでこのような形で「あお」の音を多用すること*5で、Aメロとの対比とサビへの予感が作り出されている。私はそのように感じます。

この予感についで「そう(so)」の音で勢いをつけてサビへ入ると本当に気持ちがよいです。自分も山に登りたくなってきますね。登らないけどw

実際の役割分担がどうなのかは、いまのところ想像するしかないのですが、脚韻を考えたのは稲葉エミさんでメロディへの配置を考えたのはTom-H@ckさんだったりするのでしょうか。いずれにせよ、まったくプロのワザと言うべき、すばらしい仕事だと思います。

みなさんも聴いてみて。

*1:http://www.kasi-time.com/subcat-sakushi-5034-1.html

*2:放送・配信用バージョン。なお、上に張った動画は第一話ですが、以下の歌詞は第二話以降のバージョンのもの。映像もすばらしいものに差し替わっているのでぜひ最新回などで確認してみてください

*3:島袋八起「西洋音楽とJ-POP論 ―― 『もってけ!セーラーふく』論 準備編」(『筑波批評』2011年秋号、筑波批評社、pp. 48-75.)など

*4:村尾忠廣・疇地希美 「90年代おじさんの歌えない若者の歌〜その2 ―― 弱化モーラによる配字シンコペーションとおじさんの音楽情報処理」『情報処理学会研究報告 [音楽情報科学]』 vol. 98(74), pp. 31-8、1998年

*5:意味的には他の言葉でもよさそうなところをあえて「あお」の音を持った語を入れてる感じがするのですがどうでしょう