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野矢茂樹『入門! 論理学』

商品紹介やアマゾンのカスタマーレビューが適切なのでイントロダクションとしてそれほど付け加えることはないが、思考の誘導が上手いのですごく読みやすい本だと感じた。読んでいて「ああ、こういうことか。そうするとこういうことがいえそうだよな」と思い浮かぶと次のパラグラフにそれが書いてある、ということが度々起こるというか。

本書では公理をひとつひとつ取り上げて導入していき、述語論理の公理系ができるまでを実際にたどっていく。そこまで導かれる(また一緒に頭を動かす)過程によって、いままで表面的に理解していたことがらがより深いレベルまで理解できたように思える(自家薬籠中の物とまではいかないけど)。例えば次のような点など:

  • 論証、導出、推論の違い
    • 論証
      • ある前提から何らかの結論を導く全体(前提も正しいことが求められる
    • 導出
      • 前提から結論を導く過程
    • 推論=演繹
      • 前提を認めたら必ず結論も認めなければならないような導出(のあり方)
  • 排中律の採用=実在論的立場の採用
  • 命題論理におけるド・モルガンの法則と述語論理でのそれが実質的に同じことを言っていること
    • 全称命題=連言、存在命題=選言
    • 連言の否定は否定の選言、選言の否定は否定の連言、全称の否定は否定の存在、存在の否定は否定の全称
  • 肯定式(A、A⇒B、ゆえにB)
  • 否定式(A⇒B、Bでない、ゆえにAでない)

これらに加えてもちろん命題論理の公理――否定、連言、選言、条件法のそれぞれ除去則、導入則――もわかる。そのうちのいくつかを使うと、ちょっとまえにTwitterでちょっとバズってた次の難題が解けてしまったりする。

証明
  前提:「外では雨が降っており。かつ雨は降ってない」
  (1) 前提と連言除去則から:「外は雨が降っている」
  (2) 1と選言導入則から:「外は雨が降っている」または「源義経の母親はナポレオンである」
  (3) 前提と連言除去則から:「外は雨が降っていない」
  (4) 2、3と選言除去則から:「源義経の母親はナポレオンである」

これであってるはず。問題文では「外では雨が降っているをA、源義経の母親はナポレオンであるをB」とするように指示されてるからこの試験ではそれを使って記号式で書く必要があるだろうけど。

さて、これで自力でも「矛盾から何でも導きだせる」ようになったわけなので、いつかどこかで使おう(笑)