Jablogy

Sound, Language, and Human

My First Impression of Juke/Footwork

 ここ数日、Twitterでフォローしている @mirgliPilgrim さんが最近アップした Juke のリズムを解説する記事が結構な注目を集めている。

 シカゴ発の新しいダンスミュージックであるJuke/Footworkには以前から興味はあって、このブログでも「Footwork - 英語版Wikipediaより」の記事ではwikipediaの解説を翻訳してみたりした。

 けれども、肝心の音源を、ジャンルの特徴をつかめるほどには聴いていなかったので、これをいい機会にと、次のまとめで紹介されている音源を聴いてみた。

 以下、その感想を。上のまとめとYoutubeで検索してヒットしたものをいくつか聴いたという段階での印象なので、詳しい方からすると的外れなところもあるかもしれないけれど、初心者なので、ということでお許しいただければ。

Jukeに香るアフリカ系音楽のフレイバー

ポリリズム

 以前Twitterで、デトロイト・テクノにアフリカ音楽的なものを感じてそう言ったことがあった*1のだけど、ざっと聴く限り、より juke/footwork のほうが音的に電子化したアフリカ音楽であるような印象を受ける。エレクトロナイズド・ルンバとでもいうか。

 Juke のリズムはスネアやフレーズから判断するとBPM80が基本のようだ。だけど、そのテンポが明示される度合いが低くて(スネアくらいしか手がかりがないこともしばしばある感じ)、むしろ32分音符の3・3・2フレーズのシンコペーションが表に出てる場合が多い。

 なので、BPM80と4倍テンのBPM320のポリリズム(場合やパートにより160とかも)になってるように聴こえるし、どのBPMが支配的っていうこともないので、それら同時に流れているBPMを総合的に・同時に感じることができる耳が求められるのではないだろうか。

 加えて、基本となるBPMとノリ方は同じでありつつ、曲によってリズム・パターン自体は違ったりするのも、1ジャンル=1リズム・パターンの場合が多いクラブ系音楽に慣れている人には Juke はつかみにくい、という印象になるのかもしれない。

 定型化の度合いについても、ハイハットの刻みがなかったり、キックとスネアのパターンも定型化してなかったりとかするし。キックやスネアの組み合わせがビートやアクセントを刻むのではなく、唄うようなフレーズを形成するのもジャンベ音楽っぽいかもしれない。これは juke に限ったことでもないかな。

 ともあれ、二倍、四倍、半分のBPMを楽曲側も行ったり来たりするし、聴く側もフォーカスをずらしやすいのはとてもアフリカ的なように思われる。ファンクとか Hip Hop とかもそうなんだけどよりあからさまというか。

でも2:3はあまり聴こえない?

 アフリカ音楽といえば2:3のポリリズムなのは周知の通り。で、次のような意見もある。

@cowp: @mirgliPilgrim JBの倍速ダンスからシカゴハウスやゲットーテックに繋がっていく黒人音楽の文脈で160と120を共存させるアフロポリリズムの導入がjukeの技術的要素。君のサンプルのベースのシンコペーションの持続もBPM120の8beatの変拍子にもとれるでしょ
(https://twitter.com/cowp/status/522292795545882626)

@mirgliPilgrim: @cowp ♪. + ♪. + ♪ ≒三連符ということですよね?BPM160の二拍三連=BPM120の八分音符でありジュークは160と80の二重構造ではなくて160-120-80のポリリズムという理解でよいでしょうか?とすれば、32ビートと書いてしまうのは確かに間違いですね。
(https://twitter.com/mirglipilgrim/status/522365116876996608)

 NAVERまとめの紹介でも三連を多用するというように書いてある。しかし、貼られてる動画を見るとそれほどでもないような気もしてくる。確かに DJ Rashad などは三連(つまり2/3, 3/4倍のBPMともいえる)も使っているのだけれど、全然使わない人もいるし、アフリカ音楽ほど常に2:3が聴こえる感じではないような。

「♪. + ♪. + ♪ ≒三連符」*2も、例えばキューバのルンバやブラジルのサンバなんかでは、確かに訛ることで近似値的に三連に近づいたり、相互にスライドして入れ替わったりするのだけど、Juke の場合、訛りがあまりなくシュアな32分音符で鳴っているので、私の感覚では4倍テンの方が強く感じられる。

 音の面についてはこれくらい。次はダンスについて少しだけ触れてみよう。

アフリカ系ダンスの連続性

 初めて Juke/Footwork の紹介動画*3を見た時に思ったのは、ああ、このダンスもアフリカ音楽の伝統をすごく感じる、ということだった。

 論より証拠ということで、アフリカのダンス、そしてアフリカから新大陸へ伝わりその知で発達したダンスの動画をリスト・アップしてみる。一動画につき何十秒かつまむ程度でいいので、リストを追って最後までご覧あれ。

  • アフリカのジャンベ音楽とダンス:Dununba #1 "HD" Djembe drum and dance party in Conakry, Guinea

  • キューバのルンバ:Mario Quintin y Dayami Couret - Rumba Cubana al Kebira Salsa Summer

  • 1930年代のスウィング・ジャズで踊られたリンディホップ:Whitey's Lindy Hoppers from the 1941 film Helzapoppin

  • ジェイムス・ブラウンのダンス:James Brown performs and dances to "Night Train" to a live audience on TAMI Show.

  • マイケル・ジャクソンMichael Jackson Dance Collection

  • ブレイクダンス:** Breakdance Dope Bout & Crazy Moves **

  • イギリスの映画でのストリートダンス:StreetDance 3D Club Battle Breakin Point Vs The Surge

  • ヒップホップのダンスバトル:1st Round Battles; HipHop Summer Dance Forever 2013 -

  • そして Juke/footwork:Juke / Footwork Mini Documentary feat Da Mind Of Traxman JP

 基本的な体の使い方なんかが共通してる用に見えるのではないだろうか。七類誠一郎のいうインターロック*4を基本にしたしなやかな四肢の動きというか。

 そして、ダンスしてる場面の様子も、コミュニティの皆で囲んで見ながらそれぞれ技を競っていく形式になっている。(もちろん、ルンバとリンディホップはヨーロッパのカップルダンスの影響で男女ペアになってたり、JBやマイケルはショウだったりといった違いはあるけれど。)

 推測するに、ダンス・ミュージックといってもクラブでみんなで揺れるためのものと、アフリカ的なコミュニティ・ダンス系というか、スキルの優劣を競う/披露するダンス文化のものとがあって、Juke/Footworkは後者なのだろう。

 ***

以上がほぼファーストインプレッションの記録だ。

こういうアフリカンな要素のある音楽は大抵、リズムコンシャスな私の好みに合うので、もっと聴いて掘り下げでいけたらよいのだけれど。

*1:http://twitter.com/ja_bra_af_cu/status/415897844881436672

*2:付点八分なので基準をBPM320で取ったときの表記。160で取るなら付点16分、80なら付点32分になる

*3:リストの最後に上げたもの

*4:『黒人リズム感の秘密』郁朋社、1999年