Jablogy

Sound, Language, and Human

「コードは押えられるんだけど……」という人のための理論書

上の音楽理論書をまとめて紹介した記事が結構ブクマを集めていた。

とてもよいレコメンドだろうと思うけれど、鍵盤奏者向けな傾向はあるかもしれない。 クラシックピアノ経験者で、指は動くし譜面も読めるという人はあれでバッチリなはず。

しかし、自分の経験を振り返って見るに、多分、一番入門的な理論書が必要なのは、

  • ロックバンドをやってきて、楽譜は読めないものの、ひととおりコードを押さえたりタブ譜を見ながらコピーしたりは出来る

とか、

  • ブルースや一発モノでペンタトニックのソロならとれる

とか、そういうレベルのギタリスト・ベーシストがジャズのアドリブやポップスの作曲に挑戦するときなのじゃないかと。*1

 というわけで、そういうときによいと感じた本を2つ貼ってみる。

「ギターで覚える」の名の通り、理論の理屈だけでなく、それをどうやってギターで弾くか、指板上でどう覚えるかという視点に立って書かれた本。

 五線譜も使っているけど、コードのダイアグラムなどを使って説明してくれるので、ギタリスト・ベーシストもかなり読みやすいと思う。

 内容のレベル的には、ダイアトニックコード、代理コード、転調、オルタード・スケールなどを使ったコーダルなジャズの初歩まではこの本で理解できるはず。

 みなさまご存知、菊地・大谷の音楽理論講義。
 いつもの軽妙な語り口で、バップ、モード、ポリリズムなどを解説している。

 音楽にはそこまで詳しくない映画美学校の学生に実技的な理論をある程度習得させることを目標にしているので、わかりやすさは申し分ない。

 加えて、後続の『東京大学アルバート・アイラー 歴史編』とともに、それぞれの理論がもっている背景をメタ的な位置から俯瞰して、その要点と価値を一般に向けて説明してみせたという先駆的な試みは高く評価してよいと思われる*2

 何より、ただ細かい規則を覚えるよりも、背景を知ったほうが、音の組織され方も捉えやすく・覚えやすくなるしね。

***

 私自身は未読だけれど、他にもギターで学ぼうという類書が結構出ているようで、譜面苦手なギタリストにとって "便利な世の中になったものじゃ" と思う。

 あと、本以外では、教則ビデオを見ると、全部は理解できなくてもいろいろアイディアを得られてよいかな。私が見たことあるのでいえばジョー・パスハーブ・エリス、エミリー・レムラー、スコット・ヘンダーソンあたり。

*1:端的にいうと○m7-5 の意味がわからない人、という感じ

*2:記述の正確さや見解の当否については意見がわかれるかもしれないけれど