クリス・デヴィート編『ジョン・コルトレーン インタヴューズ』
- 作者: クリスデヴィート,小川公貴,金成有希
- 出版社/メーカー: シンコーミュージック・エンタテイメント
- 発売日: 2011/03/25
- メディア: 単行本
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- 原著:DeVito, Chris. (Ed.) 2010 Coltrane on Coltrane: The John Coltrane Interviews. Chicago: Chicago Review Press.
コルトレーンの発言集成。具体的な音楽理論や技法についてはさほどわかることは多くないが,コルトレーンの人柄については本書全体のトーンを通じて感じ取ることができる。
コルトレーンは発言の一貫性が高く,過去にした言明もよく覚えているところから実直さが伺え,また他人を誹謗したりないことから誠実な人柄であることが感じられた。
宗教についても,なにか特定の宗派に忠実というよりは,自分で宗教や人間性についての省察を深め健全な霊性を獲得しているようであった1。
コルトレーンに関してはよくその演奏・即興のスタイルが進歩・進化したことが取り沙汰されるが,例えばシェーンベルクのような過去の書法や様式を乗り越えねばならないという進歩主義をとっているのではないような感じがした。
むしろ,試してみたい様々なアイディアが次々湧いてきて,それを追求しているうちに結果としてどんどん新しいスタイルを打ち立てることになった,というような印象が強い。アドリブが長尺になるのも,その曲での可能性をすべて試したいからであったとか(p. 221,235)
エルヴィンがコルトレーンに薫陶を受けたとする説をしばしば耳にした覚えがあるが,
「最初の頃はエルヴィンのプレイにとても戸惑った」(p. 207,1961/11/18)。
「リズムに関してもっと柔軟でありたい。リズムのことをもっと勉強しないといけない。テンポについてはまだまだ実験不足だ。今まではハーモニーの実験に明け暮れていて,テンポとリズムを蔑ろにしていた」(p. 226,1960)。
これらの発言(および1957のトミー・フラナガントリオ《Overseas》ですでにスタイルを確立していたこと)からすると,とりわけリズムについてはむしろエルヴィンがコルトレーンバンドのカラーを決定づけていたのではないかと思われる。
進歩的なミュージシャンの常として批評家に酷評を受けたこともよく知られているが,そうした無理解に対して,わからないことがあれば相談に来たらよい,共に語り合おうとエリック・ドルフィーとともに呼びかけている姿勢は興味深い(p. 247: 1962, p. 438: 1966)。
ヨーロッパよりもアメリカの批評家の方が保守的で新しいサウンドに拒否反応を示しがちであり,その理由はヨーロッパではジャズはシリアスな芸術だがアメリカでは「ナイトクラブ事業の一部だと思われている」(p. 445 )ゆえだというフランク・コフスキーの見解は納得感があった。
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以上のように興味深いトピックの多数ある書物だった。
ひとつだけリクエストするならば,資料性が高く様々な観点から読むことのできるせっかくの著作なのだから,版を改める際にはぜひとも索引をつけてほしいと思う。
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彼がスピリチュアルな人物であることはまちがいないが,有名な「聖者」発言については,どうも噛み合わないインタビューがつづいたところに「10年,20年後どのような人物になりたいか」という答えづらい質問が来たので,冗談めかしてそう言った,というようなニュアンスに読めた(p. 404)。↩