「コードは押えられるんだけど……」という人のための理論書
上の音楽理論書をまとめて紹介した記事が結構ブクマを集めていた。
とてもよいレコメンドだろうと思うけれど、鍵盤奏者向けな傾向はあるかもしれない。 クラシックピアノ経験者で、指は動くし譜面も読めるという人はあれでバッチリなはず。
しかし、自分の経験を振り返って見るに、多分、一番入門的な理論書が必要なのは、
- ロックバンドをやってきて、楽譜は読めないものの、ひととおりコードを押さえたりタブ譜を見ながらコピーしたりは出来る
とか、
- ブルースや一発モノでペンタトニックのソロならとれる
とか、そういうレベルのギタリスト・ベーシストがジャズのアドリブやポップスの作曲に挑戦するときなのじゃないかと。*1
というわけで、そういうときによいと感じた本を2つ貼ってみる。
CD付き ギターで覚える音楽理論 確信を持ってプレイするために 養父貴 著
- 作者: 養父貴
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2005/03/25
- メディア: 楽譜
- 購入: 10人 クリック: 44回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
「ギターで覚える」の名の通り、理論の理屈だけでなく、それをどうやってギターで弾くか、指板上でどう覚えるかという視点に立って書かれた本。
五線譜も使っているけど、コードのダイアグラムなどを使って説明してくれるので、ギタリスト・ベーシストもかなり読みやすいと思う。
内容のレベル的には、ダイアトニックコード、代理コード、転調、オルタード・スケールなどを使ったコーダルなジャズの初歩まではこの本で理解できるはず。
憂鬱と官能を教えた学校 上---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 調律、調性および旋律・和声 (河出文庫 き 3-1)
- 作者: 菊地成孔,大谷能生
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 14人 クリック: 164回
- この商品を含むブログ (39件) を見る
憂鬱と官能を教えた学校 下---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 旋律・和声および律動 (河出文庫 き 3-2)
- 作者: 大谷能生,菊地成孔
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 46回
- この商品を含むブログ (33件) を見る
みなさまご存知、菊地・大谷の音楽理論講義。
いつもの軽妙な語り口で、バップ、モード、ポリリズムなどを解説している。
音楽にはそこまで詳しくない映画美学校の学生に実技的な理論をある程度習得させることを目標にしているので、わかりやすさは申し分ない。
加えて、後続の『東京大学のアルバート・アイラー 歴史編』とともに、それぞれの理論がもっている背景をメタ的な位置から俯瞰して、その要点と価値を一般に向けて説明してみせたという先駆的な試みは高く評価してよいと思われる*2。
何より、ただ細かい規則を覚えるよりも、背景を知ったほうが、音の組織され方も捉えやすく・覚えやすくなるしね。
***
私自身は未読だけれど、他にもギターで学ぼうという類書が結構出ているようで、譜面苦手なギタリストにとって "便利な世の中になったものじゃ" と思う。
あと、本以外では、教則ビデオを見ると、全部は理解できなくてもいろいろアイディアを得られてよいかな。私が見たことあるのでいえばジョー・パス、ハーブ・エリス、エミリー・レムラー、スコット・ヘンダーソンあたり。