Jablogy

Sound, Language, and Human

マルコ・イアコボーニ 『ミラーニューロンの発見』

他者の行為をみているとき、その行為をトレースし鏡写にするかのように発火する脳内の神経部位:ミラーニューロン。その発見は生命科学におけるDNAの発見にも比肩するといいます。ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新…

2011年 ボカロ曲10選 レヴュー

今年一年で出会ったボカロ曲から10曲おすすめを選んで見る企画ということで、これはすごいと思った曲を素直に集めてみました。マイリストはこちらです。本エントリには、マイリスの10曲には入りきらなかったけどどうしても入れたい人も追加してます。曲的に…

細川周平『レコードの美学』

はじめに 日本におけるポピュラー音楽研究の先駆者の一人、細川周平の大著。博士論文を改稿したものとあって、大きなボリュームにもかかわらずロジカルな構成になっていて読みやすいです。レコードの美学作者: 細川周平出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 199…

『筑波批評』2011年秋号

今号も寄稿者のやおきさんにご恵投いただきました。ありがとうございます。今回は「街」がテーマということで、表紙もシムシティみたいな感じで、論考は前半3つが「街」に関係したものになっています。あとは後半で村上裕一の『ゴーストの条件』への言及が…

スタジオ・ハードデラックス編 2011 『ボーカロイド現象 ―― 新世紀コンテンツ産業の未来モデル』 PHP研究所

SFマガジン・ミク特集に続いて、『Vocalo Critique Pilot』における文献ガイドの補足・その二、を試みたいと思います。ボーカロイド現象作者: スタジオ・ハードデラックス出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2011/03/17メディア: 単行本(ソフトカバー)購入…

島袋八起編 2011 『Vocalo Critique』 Pilot, Nov. 2011、白色手帖

本誌は、2011年6月の文学フリマで頒布された『Vocaloid Critique』*1 の再版ver. です。 文学フリマにくる、あまりネット文化・ボカロ文化に馴染みのない人を読者に想定して書かれているため、vol. 01 とはだいぶ毛色の違うものになっていますが、議論の濃さ…

佐々木敦 2008 『「批評」とは何か? ―― 批評家養成ギブス』 メディア総合研究所

はじめに 音楽を中心に多ジャンルで活躍する批評家、佐々木敦が自身で主催するカルチャースクール〈BRAINZ〉において開講した「批評家養成ギブス」という連続講座をまとめたもの。(ブレインズ叢書1) 「批評」とは何か? 批評家養成ギブス作者: 佐々木敦出版社…

チーム☆独身者編 『らすてぃら』

Vocalo Critique Pilot 寄稿者のまつともさん(@matchamttm)が参加しているサークルが2011年6月の文学フリマで頒布した同人誌。サークル名の「独身者」とはミシェル・カルージュが『独身者の機械』*1において提唱した概念によるようです。近代社会における…

S-Fマガジン [2011年8月号 特集・初音ミク]

先日文学フリマにて頒布されましたVocalo Critique Pilotの文献ガイドでも紹介した雑誌です。Pilotでは手短な紹介しかできなかったので補足を試みたいと思います。S-Fマガジン 2011年 08月号 [雑誌]出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/06/25メディア: 雑…

菊地成孔・大谷能生 2008 『M/D ―― マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究』 エスクァイア マガジン ジャパン

ジャズミュージシャン・評論家の菊地成孔・大谷能生のコンビによる「ジャズの帝王」マイルスの研究本。『東京大学のアルバート・アイラー』に続く東京大学教養学部での講義(2005年)をまとめたものに、その後行なわれたインタビューや雑誌へ寄稿されたエッ…

濱野智史 2008 『アーキテクチャの生態系 ―― 情報環境はいかに設計されてきたか』 NTT出版

情報技術に注目した批評で活躍する濱野智史の、いまのところの主著といっていいでしょう。ネットやウェブサービスを単なるメディアとみるのではなく、「情報技術(IT)によって設計・構築された人々の行動を制御する『アーキテクチャ』」(p.14)としてとら…

斎藤環 2006 『生き延びるためのラカン』 バジリコ

斎藤先生ご専門のラカンを解説。「日本一わかりやすいラカン入門」を標榜しています。語りかけるような口調というか文体で、ざっくりとしたレクチャーを受けているような感覚になります。細かい説明は大分はしょられているので、正確さ・厳密さには懸けると…

村上裕一 2011 『ゴーストの条件 ―― クラウドを巡礼する想像力』 講談社BOX

ゼロアカ道場優秀者の単著デビュー作。道場主の東浩紀がとりあげてきた美少女ゲームに加えて、ニコニコ動画でのUGC・二次創作を大きく取り上げているのが特徴ですね。 ゴーストの定義 いずみのさんもいうように*1本書を通して「ゴースト」という用語*2は…

DnB発展型リズム・興味深い音源・テトの日

最近立て続けにいい曲に出会えたのでまとめて紹介したいと思います。 強力なリズム 【ニコニコ動画】初音ミク - CivitaS Re/constructioN(オリジナル PV) タグ VOCALOID (∵)キョトンP HAMO 初音ミク ミクオリジナル曲 CivitaS_Re/constructioN ミックンベー…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (3)

(2)へ Ⅲ 声と人称 第Ⅲ部では語ることと、そのかたりが帰属する人称・人格の問題が論じられる。前述したとおり私の多重化や非人称化される歌、非・近代社会における個性といったことが取り上げられ、西洋近代的な「我」や「ペルソナ」の概念をアフリカの文…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (2)

(1)へ Ⅱ 声によるコミュニケーション 第二部では他者に対し呼びかけることで社会的な関係への参入を引き起こさせるという名前のもつ働きに注目した議論がなされている。筆者としては、このあたりは声や歌の議論よりもむしろ、キャラクターと固有名などの議…

川田順造 1988 『聲』 筑摩書房 (1)

概要 『音・ことば・人間』でも紹介した、西アフリカ・ブルキナ・ファソのモシ族を調査してきた川田順造による、声とそれを使ったコミュニケーションの文化的な側面を考察するエッセイ集で、『現代詩手帖』(思潮社)で1985年3月号から1986年11月号まで連載…

【鏡音リン・レン】ジェミニ【オリジナル】

【ニコニコ動画】【鏡音リン・レン】ジェミニ【オリジナル】 動画タグ 音楽 鏡音リン 鏡音レン Vocaloid DixieFlatline ジェミニ ProjectDIVA2nd収録曲 JOYSOUND交渉中 星のうた レヴュー 鏡音リン・レンによる透明感あふれるグルーヴィなR&Bナンバー。曲の…

【猫村いろは】胡蝶のミメシス【オリジナル曲PV付】

【ニコニコ動画】【猫村いろは】胡蝶のミメシス【オリジナル曲PV付】動画タグ VOCALOID 猫村いろは いろはオリジナル曲 胡蝶のミメシス 夏空P はいのことん 乃良 VOCALOID新曲リンク piro VOCAJAZZ レヴュー 夏空Pことベッコーさんの13作目、猫村いろはの生…

斎藤環 2011 『キャラクター精神分析 ―― マンガ・文学・日本人』 筑摩書房

はじめに ラカン派精神科医の批評家・斎藤環によるキャラクター論。 筑摩書房のHPから目次を引用させていただくと次の通り。 第1章 「キャラ」化する若者たち 第2章 「キャラ」の精神医学 第3章 「キャラ」の記号論 第4章 漫画におけるキャラクター論 第…

レヴュー: 【VY1】サイバーサンダーサイダー 【オリジナル曲】

はじめに ボカロクリティーク界隈で各論・作品論がすくないよねー、という話がでています。ニコニコ動画の文化では「ないなら自分で作れ」「言い出しっぺの法則」という格言がありますので、先ず隗より始めよというわけで私もやってみます。更新は不定期にな…

小田亮 2000 『レヴィ=ストロース入門』 ちくま新書

続・積ん読くずし。もっと先に読むべき本があるけど、なかなか大変。早いものでレヴィ=ストロースがなくなってからもう2年が経とうとしており、構造主義が隆盛を誇ったのも昔になりつつありますが、著者のレヴィ=ストロースへの共感が深く、いまでも彼の思…

Reply to やおきさん その2

またトラバで人の議論にコメントをします。 なかば公開往復書簡のような感じがしないでもない。 コメントといってもやおきさんが 「作者の意図」や「押韻」といったことばを、僕はおそらく一般的な用法ではないやりかたでこっそりと定義し、意図的にそれを隠…

Reply to やおきさん’s 「ぴちぴちピッチの劇中歌」(第1回、第2回)

トラックバックなるものをしてみんとす。 言及先の記事は「ぴちぴちピッチの劇中歌」第1回と第2回。やおきさん(id:yaoki_dokidoki)の歌詞論は以前から拝読させていただき、いろいろ意見も述べてきました。 今回および前回のエントリにだいぶその私の意見を…

感想:『ユダヤ・エリート』、『中国の旅』、『子どもはことばをからだで覚える』

音楽とは直接かかわらない本の感想をまとめて記しておきます。 鈴木輝二 2003 『ユダヤ・エリート ―― アメリカへ渡った東方ユダヤ人』 中公新書 アメリカのポップスにも大きく影響を与えたユダヤ人移民についてすこし知りたいとおもい積読になっていたのを崩…

ボカロクリティーク Vol. 01 後半を紹介!

こちらでやおきさんが今度のボーマスで頒布される『ボカロクリティーク』の紹介をしてますが、私も校正をお手伝いしたご縁で原稿を見せていただいていますので、簡単に感想でも述べて宣伝に協力したいと思います。やおきさんも更新で残りを書かれるみたいで…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (3)

(2)へ、はじめから読む方はこちら(1)へ ■考察 下部構造が上部構造の影響、因果関係の不分明 死に舞さん(@shinimai)も いろんなとこで言ってるけど、ベンヤミンのアウラは認識論的な話と複製に関わる存在論的はなしごっちゃにしているから使えない。 http…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (2)

(1)へ ■写真と映画 編集(モンタージュ) 技術的複製可能性の時代における芸術の問題としてベンヤミンが意識しているのは、印刷やレコードのプレスによる大量生産によるアウラの減退ということだけではない。むしろ写真や映画のカメラが作品を撮影する事に…

ワルター・ベンヤミン 1939 「技術的複製可能性の時代の芸術作品 」 (1)

■はじめに テキストのベクトル ―― ファシズムに抗して 序言と後書きにおいて、ファシズムの芸術利用に対してオルタナティブとなる共産主義的な芸術のあり方についてベンヤミンは述べている。ナチスやファシズムによる芸術を利用するポリティクス、すなわち政…

小泉文夫は民族音楽学学者なのか?

◆イメージのズレ 「民族音楽」や「日本の伝統音楽」に関心のある人ならだれもが一度は参照する小泉文夫。一般にはテレビなどで「民族音楽」を紹介した仕事で有名ですね。「民族音楽」を研究している人なのだから「民族音楽学者」なのだろうと普通は理解する…